原則18歳以上の成人による娯楽用大麻の使用が実際に解禁となった10月17日午前0時、カナダ全土はお祭りムードに包まれた。ハイタッチで歓喜する人や、広げたカナダ国旗の前で乾燥大麻を吸う人らの姿がSNSなどで世界中に配信された。

「乱用や依存の問題がより深刻なアルコールと比べると、大麻の取り締まりは過剰だった。アルコール同様に合法化したうえで、対策を考えるべきだった」

 そう話すトロント在住の高校職員、ジェームス・ジャレットさん(37)は、大麻の使用に個人的な興味はないというが、合法化の判断は支持している。同時に問題点も指摘した。

「未成年者の使用は引き続き違法だ。私の州では、たばこの喫煙が許されている場所なら公園や道路でも大麻の使用が認められていて、あちこちで大麻のにおいがする。たばこよりも陶酔感が強い大麻だけに、未成年者も集う公共の場での使用まで認めるのは寛容すぎるし、新たな社会問題を誘発しかねない」

 この陶酔感を求めた末の乱用が、身体的、精神的障害につながる危険性があるとして、法律で厳しく禁じる国が多いのが現状だ。日本はその最前線におり、米国も国としては、大麻をヘロインやコカインと同類の危険薬物としている。

 一方で、依存率はアルコールやたばこよりも低いとされ、幻覚や禁断症状などの危険性も他の麻薬より低いという議論もある。違法とするからこそ栽培や販売に反社会的組織が手を出し、逆に犯罪を誘発したり、組織の資金集めに使われたりしているという問題提起もある。実際にカナダは合法化の目的の一つに、そうした犯罪の撲滅を掲げた。また、細かい取り決めを定めたうえで合法化することで、使用者の取り締まりにかかる経費削減や、贅沢品としての税収増が期待でき、合理的だとの考え方もあるようだ。(編集部・山本大輔)

AERA 2019年1月14日号より抜粋