大学はもちろん、高校でも、姫野の才能は大事に育てられた。
「中学で初めてみたとき、子どものなかに大人が入っているのかと思った。それほど抜きん出ていた」と振り返る中部大春日丘高校の宮地真監督(53)は、姫野を他部員のタックル練習に加わらせなかった。
「他の選手がけがをする(笑)。それに本人が変に加減するのも良くない。遠慮してタックルをする癖をつけさせたくなかった」
トヨタのキャプテンに指名されたとき、すぐにメールがきた。メディアやファンの間では驚きをもって受け止められたが、本人は冷静だった。
「なぜ自分が任されるのかはわかっている、と書いてあった。自分が失敗しても、それを周りがカバーすることで一体感が生まれると理解しているようでした。彼は自分でいろいろ考えてやるタイプ。これからもっと成長できると思う」と期待を寄せる。
前季からトヨタでメンタルコーチを務める荒木香織さんのサポートを受ける。エディージャパンのマインドセットを作り上げたこの道の第一人者。姫野は「影響は大きいです。自分で考えながら、自分に合うマインドセットを固めて自分の中に芯を作りたい。自分なりに成長しているとは思うが、まだまだ甘さがある。そこを突き詰めて、もっといい選手になりたい」と表情を引き締めた。
もうひとり、姫野にとって偉大なインフルエンサーは、チームの心臓として常にハードワークする日本代表主将でFLのリーチマイケル(30)だろう。仮にリーチとともにFLを形成するには、外国出身の選手とも日本代表の座を争わなくてはならない。
選手らの熱い戦いとともに、大会への注目度も日増しに高まる。1月には3万8千人から1万人に絞られたボランティアスタッフの発表もある。キックオフの瞬間が待ち遠しい。(ライター・島沢優子)
※AERA 2019年1月14日号