姫野和樹選手 (c)朝日新聞社
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ラグビーワールドカップ2019試合開催会場(AERA 2019年1月14日号より)
ラグビーワールドカップ2019試合開催会場(AERA 2019年1月14日号より)

 2015年W杯で南アフリカを破った熱狂から4年。この間、日本代表の大きなニューパワーとして躍り出たのは姫野和樹(24)だろう。大学選手権8連覇を遂げた帝京大学を17年に卒業すると、同年11月のオーストラリア戦で初キャップを獲得し日本代表に定着。加入したトヨタ自動車では、07年W杯で南アを優勝に導いたジェイク・ホワイト監督から、異例の「ルーキー・キャプテン」に抜擢されるほど評価されている。

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 187センチ、108キロ。主なポジションは、スクラムの3列目にあたるフランカー(FL)だ。名前をネット検索すると「筋肉」と出るほど、外国人選手に引けをとらないフィジカルが注目される。31-69と負けはしたものの日本が5トライを挙げ健闘したニュージーランド代表とのテストマッチ(昨年11月)。姫野は、世界最強と言われる猛者たちを相手に接点の強さと突破力を披露した。

「W杯には何とかして出たい。(短いオフが明ければ)また新しい選手も入ってくるので、その競争に勝ってまずはメンバーに入らなくてはいけない」と気を引き締める。

 その道のりは決して平坦ではなかった。

 中学からラグビーを始め、愛知県の春日丘(はるひがおか)(現・中部大学春日丘)高校時代からその才能は際立っていた。1、2年時には花園に出場。3年の終わりには、高校ジャパンから飛び級でU20日本代表に選出された。

 帝京大学1年の夏。エディージャパンの候補合宿に初めて招集されるも、ピンチに陥る。合宿初日に左足の第5中足骨を骨折。3年生になるくらいまで満足にプレーできなかった。

 帝京大学の岩出雅之監督(60)が「ほとんどベンチスタートか途中交代。先発してある程度プレーできたのは4年生の(大学)選手権最後の勝負所の試合くらいだったと思う」と話すほど、4年間のプレータイムは短かった。

 だが、結果的にそれが功を奏した。帝京のように選手層の厚いチームでなければ、テーピングをし、痛み止めを飲んでプレーすることもあるいはあったかもしれない。だが「近い将来のジャパンを背負っていく選手だとわかっていた。彼にはその先があると考えたうえで(慎重に)起用していた」(岩出監督)。選手の「伸びしろ」を残す大学王者のマネジメントがあったからこそ、無理をしてケガを長引かせたり、体を壊す落とし穴にはまらず済んだ。

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