それを象徴するかのような医学界の現状。医学部不適切入試問題から透けて見えるのは、女性差別をはじめとする医学界の古い価値観だ。

 都内の病院に耳鼻科医として勤務する女性(35)は、「男性社会であることが当たり前」と話す。開業医の父は、家では超がつくほどの亭主関白で、専業主婦の母に「あれを取れ」「これを買ってこい」など指図している風景が日常だった。医師と結婚した女友達の多くも「夫は本当に何もしない」と嘆く。女性自身は長男出産後も仕事を続けたが、上司の男性医師からは「無理して復帰しなくてもいいよ」とさらりと言われた。

「上司に悪気はなかったが、そういう意識が男性医師のスタンダードで、今も変わらない」

 同期の女性医師はパワハラのような物言いをされた。この同期は、妊娠を公表した途端に勤務していた大学病院の教授から「離島に行かせてやる。出産しても辞めさせないからな」と叱責されたという。結局、同期はこうした環境に嫌気が差し、別の病院に移って行った。(編集部・作田裕史、澤志保、川口穣)

AERA 2018年12月31日-2019年1月7日合併号より抜粋

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