医学部の不正入試が問題となっている。公平性が問われるはずの大学入試で、なぜ不正が黙認されてきたのか? 未だジェンダーギャップから抜けられない、「圧倒的な男社会」である医療業界の現状を追った。
【理解しがたい理屈が並ぶ…文科省に「不適切入試」と認定された大学はこちら】
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「不正入試は、あってもおかしくないと思っていました」
愛知県内の大学に通う医学科5年の女子学生(22)はこう話す。各大学の男女比や普段接する医師らを見て、女子に不利な扱いをする学校があることは、うすうす感じていたという。
「圧倒的な男社会なのは学生でも感じます。『家事なんて男はやらない』と堂々と話す男性医師もいます。科によっては、出産した女性はキャリアを諦めるのは暗黙の了解。現場がこんな意識なのだから、入り口で差別があっても不思議はありません」
12月14日、文部科学省は女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱ったり、卒業生の子らを優遇したりしていた9大学を「不適切入試」とする最終報告を出した。先に行われた各大学の会見では、信じられないような釈明も飛び出した。特に女子受験生に不利な扱いをした理由については、理解しがたい理屈が並んだ。
「女子の方がコミュニケーション能力が高く、男子を救う必要があった」(順天堂大)
「女性医師を増やすと、診療科目によって医療崩壊の危機がある」(東京医科大)
現役の産婦人科医で2児の母でもある宋美玄(そん・みひょん)さんは、こうした大学側の釈明にあきれ返る。
「私も『試験の点数は女子のほうがいいが、あいつらは働き続けない』という男性医師の声をずっと聞いてきました。女性医師自身にやる気はあっても、保育園が見つからないという理由で育休中に解雇された大学病院の医師もいます。女性医師は働かない、使いにくいから敬遠したい意識が医学界の常識であり、女子のコミュニケーション能力うんぬんで減点したというのは、必死で考えた言い訳でしょう」
12月18日に公表された世界経済フォーラムの報告書では、日本はジェンダーギャップ(男女格差)が149カ国中110位で、主要7カ国では最下位だった。それだけ男女平等が進んでいないという指標だ。