「人間は、脳内でセロトニンという神経伝達物質が分泌されて精神が安定・安心します。視線恐怖症を含めた社交不安障害の人は、不安や恐怖などの感情に大きく関わる海馬や扁桃体(へんとうたい)などが過活動になり、セロトニンの分泌量が減少すると考えられています」

 また、視線恐怖症の主な要因としては、環境の変化、自我の適応不全(未成熟さ)、体質・気質の問題という三つが考えられるという。

「環境が変化することで、それまでになかったストレスを感じやすくなります。入学式や入社式で周りを警戒したり、緊張したりした経験をお持ちの人も多いでしょう。こういったストレスは人によって重さが違い、緊張や不安が一瞬で終わってしまう人もいれば、継続する人もいます。特に若く自我が未成熟な場合は、新しい環境にうまく適応できない原因を視線にまつわる問題に帰属させてしまうことで視線恐怖症といった形であらわれやすいのでしょう」

 視線恐怖症は10~20代の若者に多く見られるが、それは新しい環境に飛び込むことが多いためだと考えられる。

 しかし、みき氏によると、それまでいた環境が変わることがきっかけになるので、転職や転勤、異動なども当てはまる。視線恐怖症は、年齢や性別に関係なく発症する可能性をはらんでいるのだ。

■視線恐怖症のケア方法は?

 では、自分でできる視線恐怖症のケアには、どんなものがあるのだろうか。

「ひとつは認知行動療法です。なぜ不安や恐怖を感じるのかを自分で分析して、認知の修正を図る方法です。ポイントは、自我を成熟させることを主題に置くこと。環境に適応する方法を探るように意識するといいでしょう。次に運動です。週2~3回から、20~30分の有酸素運動をすることで、うつ病を含めた精神的な症状にも高い効果が期待できるといわれています」

 近年、1日5分のウォーキング・ランニングが、学力や記憶力といった脳のさまざまな力を伸ばすと説いた『運動脳』(サンマーク出版)は、ベストセラーにも輝いた。

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有酸素運動をすることで不安や恐怖を抑えられる