●鴻上さんの答え

 文科省の調査によれば、小学校の児童による「対教師暴力」は、3628件にのぼるそうです(2016年度)。このケースに限らず、「教育者たるもの、被害者になるべきでない」とか、「警察に頼るべきでない」「毅然と対応すべし」とかいうのは精神論でしかない。それが通じた時代はもう終わっています。今は社会を取り巻く環境が変わっている。たとえ加害者が児童であったとしても、後遺症が残るほどの暴力は犯罪なんだと、もう認めていかないと。子どもからの暴力がうやむやになり、先生が疲弊し学校に良質な人材が集まらなくなって一番困るのは、子どもたちです。

 学校で起こったことは犯罪と言わない傾向にあるけど、言葉の綾というのは、時に恐ろしい結果を招く。例えば「いじめ」という言葉。この言葉の多用には功罪がある。いじめと呼ぶことで問題を明るみに出せるようになったのは正の側面。一方で、「激しいいじめですね」とかいって終わったことが、実態としては恐喝と暴力の連続だったりして、「それは犯罪でしょう!」ということもあります。それが負の側面。

 学校を聖域にして社会のルールから外すのではなく、暴力があった場合には、警察をはじめとする外部の風を当てる。そんな当たり前のことを実行していくべき時代だと私は思います。

(構成/ノンフィクションライター・古川雅子)

AERA 2018年12月10日号より抜粋

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