三谷幸喜と香取慎吾が3年ぶりにタッグを組んだ。卑弥呼の時代から太平洋戦争までの約1700年を描くミュージカル「日本の歴史」。作品のこと、お互いのこと、縦横無尽に語り合った。
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──7人の出演者で、1700年もの歴史を2時間半でまとめるなんて想像がつきません。
三谷:香取さんは、取材でどんなふうに説明してます?
香取:いつも言うのは「僕は源義経をやります!」って。それは言っていいそうなので。
三谷:それくらいはね。これは予備知識ゼロのほうが楽しめる作品。だから、1700年を2時間半で見せることと、だいたい50人近く登場人物がいるんですけど、それを7人で演じ分ける、それくらいしか言えないんですよね。あと言っていいのはほとんどの出演者が日本の歴史に興味がない(笑)。そのトップクラスがこの方(と、香取を見る)。でも稽古をするなかで少しは興味が出てきました?
香取:そうですね。家に帰ってニュースを見たときに、気になる部分が今までと違う感覚があったりします。だからテーマは「日本の歴史」なんですけど、今の時代にも通じる部分があるような……。今、結構いい感じで説明できてますね(笑)。
三谷:相変わらず、コメント力は素晴らしい。まさにテーマとして歴史は因果でつながってるんだよ、と。原因の因と、結果の果。その因果の繰り返しで時代は動いている。高校時代、歴史の先生に教えてもらったことですが、すごく印象に残っていて。単に昔の話ではなくて、あの時代があるから今があるんだという話ですね。
──しかし日本の歴史をなぜミュージカルで見せようと?
三谷:突然歌い出すなんてどう考えても嘘ですよね? 嘘で塗り固めた世界だからこそ、1700年を短時間で描ける。演劇自体がある意味で絵空事なんですが、ミュージカルはその究極のような気がして。場面がポンポン飛んでも、同じ俳優がいろんな役で入れ代わり立ち代わり出てきても許せちゃうみたいな。今回は僕にとって初めての試みで、舞台のセットもNODA・MAPかっていうくらいアンリアルですし。
香取:それはやったことないくらいのことなんですか?
三谷:ないない。僕はこれまで抽象とは真逆の世界でやってきた。なぜなら喜劇は基本的にリアリズムだから。箱を何かに見立てたり、ブレヒト幕で一瞬にして登場人物が入れ代わったり、演劇的な演出はまずやらなかった。だから今回、実は恥ずかしいんですよ。何を今さら、と言われそうで。でも人間、新しいことに挑まないと。