「フリーは完成形が見えている状態。ここでやりたかった」
試合後、タラソワコーチに出会った。「よく頑張りました」という言葉に、「本当にごめんなさい」と羽生。涙がこぼれた。
プルシェンコを育てたロシアのコーチ、アレクセイ・ミーシン氏も会場で見守っていた。
「男子、女子、ペア、アイスダンス。全てのフィギュア選手の中で、彼は最強のスケーターだ」
世界的名将からの最大級の賛辞だった。
古傷を再び痛めた影響は決して小さくない。
「悔しいなとすごく思うのは、去年のNHK杯以降、弱かった右足首がさらに緩くなってしまっていること。ほんのちょっとの衝撃でも捻挫になってしまう。でも、自分の中で今消化しているのは、事故みたいなものかなと考えています」
表彰式は松葉杖で出席した。12月のGPファイナルと全日本選手権への出場は、調整期間が必要なことを考えれば黄信号がともっている。それでも、日本スケート連盟を通じて「ファイナルに向けて、全力で治療します」とコメント。不屈の王者はすでに次戦を見据えている。(朝日新聞スポーツ部・吉永岳央)
※AERA 2018年12月3日号