この話をしてくれたのは、大手出版社の男性若手社員。出版不況と言われて久しいが、彼は伝統ある会社の正社員。給料は同年代の中でも高いほうだ。消費者金融などからの借金もなく、審査に落ちるとは考えにくい。
不審に思った男性が、信用情報機関に自分の記録開示を求めてみたところ、原因と思しきものに行き当たった。
「学生時代に何度かしてしまった、携帯電話料金の延滞の記録が残っていたんです。当時は軽く考えていて……。もちろん、遅れても、できるだけ早く支払うようにしていましたが、それでブラックリストに入っていたのでは」
端末の割賦販売を行っている携帯電話会社は信用情報機関に顧客の支払い履歴を登録している。つまりは彼らの元には膨大な顧客の信用情報が集まっているともいえる。そのビッグデータを活用して信用スコア事業に乗り出すことは、十分予測できる。実際17年9月に始まったのが、ソフトバンクとみずほ銀行による「Jスコア」。AIスコア・レンディングを標榜するこのサービスは、同意を得た顧客からの両社との取引データをもとに借り入れ条件を判定するもの。履歴から支払い能力を判定する従来の延長線上にあるが、同時に日本での本格的な信用スコア事業の萌芽でもある。
10月10日にはヤフーが自社サービスのIDを基盤に、個人のインターネットでの購買行動などさまざまなデータを分析して信用情報を数値化する「ヤフー信用」を発表した。この後提携各社との実証実験を進め、正式開始を目指す。
その直後の17日、今度はNTTドコモが、金融機関向けに「ドコモ レンディングプラットフォーム」を提供すると発表した。これは、顧客の支払い履歴や各種サービス利用状況などを解析して「ドコモスコアリング」という信用スコアを算出し、金融機関に提供するというもの。サービス開始は19年3月の予定で、すでにこのプラットフォームを利用して新生銀行が新たな融資サービスを提供することが決まっている。