あっさりしたななつぼしやヒノヒカリが輝く瞬間。まさに至福(撮影/写真部・片山菜緒子)
あっさりしたななつぼしやヒノヒカリが輝く瞬間。まさに至福(撮影/写真部・片山菜緒子)
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各県の担当者イチオシ!全国新米マップ【1】(AERA 2018年11月19日号より)
各県の担当者イチオシ!全国新米マップ【1】(AERA 2018年11月19日号より)
各県の担当者イチオシ!全国新米マップ【2】(AERA 2018年11月19日号より)
各県の担当者イチオシ!全国新米マップ【2】(AERA 2018年11月19日号より)

 今年のお米は、各産地肝いりの新銘柄が続々本格デビューする「当たり年」。そんな2018年に食べるべき「うまい新米」を紹介する。

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●いちほまれ 福井県

 その中でも、今年本格デビューを迎えた4品種は、一部で「花の18年組」と呼ばれるほどのスター候補生ぞろいだ。

 まずは王者・コシヒカリを生んだ福井県のいちほまれだ。同県では2011年、農業試験場内にポストコシヒカリ開発部を設立。20万種もの新品種候補から3年かけて100種に絞り、首都圏で1500人を対象に好みの調査を行って食味の検討を進め、最終的にたどりついた新品種だ。

 その食味は、コシヒカリよりもさらに粒立ちがアップ。「なめらか・もっちり」と「しっかりした歯ごたえ」を両立させた。県農林水産部福井米戦略課の堂越浩さん(46)は「栽培のしやすさや環境への配慮も育種目標に盛り込み、病気に強く、温暖化による高温にも耐える品種になっています」と胸を張る。通常、米の新品種開発には約10年を要するが、いちほまれは実質6年。異例の速さだが、ここまで急いだ理由は「コシヒカリの生みの親としての責任とプライド」だと堂越さんは言う。

「今はいつ、どの品種が消えてもおかしくない時代。コシヒカリの出身地として、出遅れるわけにはいかなかった」

 いちほまれは消費者の健康志向に配慮して、栽培方法により3段階のグレードを付けた。

「最高級は有機・無農薬栽培をしたいちほまれ。首都圏主要デパートなどで販売されます。ついで、農薬と化学肥料を従来より50%減らした特別栽培米。これらは百貨店のほか『お米マイスター』のいるこだわり米穀店などで。そしてスタンダードないちほまれ。それでも従来品種に比べ、農薬・化学肥料は20%減を実現しています」

 県がいちほまれに託すのは、巨大消費地・首都圏での地位向上だ。

「従来の福井米は関西圏から中京地区あたりが主消費地でしたが、これからは本格的に首都圏に切り込みます。福井県そのもののブランディングが急務なので、いちほまれは当面、県内での生産しか考えていません」

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