通常ならば書類で不採用になるケースでも、リファラルで面接、採用にいたることがあるのは、その証しだろう。
さらにリファラル採用は、社員にとっては改めて自社と向き合う機会にもなる。知人に紹介できる会社なのかどうか。どこに魅力があるのか。自分はなぜこの会社で働いているのか。採用は経営に直結する会社の根幹部分だ。紹介という形で採用にかかわることで、会社と個人のエンゲージメントも高まっていく。エンゲージメントは個人と組織が互いに成長に貢献しあう関係のことで、近年注目されている指標のひとつだ。
この観点からリファラル採用を導入しているのが、特別養護老人ホームなど全国に40を超える施設を展開する社会福祉法人の元気村グループだ。東京・埼玉の4施設で、4カ月前からリファラル採用ツールのリフカムを導入している。理事長の神成裕介さんが説明する。
「従来は、人が足りなくなったら施設長などの管理者が補充する、という図式でした。現場にとって採用は『与えられるもの』でしかなかった。リファラル採用は、紹介したくなるような職場をスタッフが自分たちで作っていく、そのきっかけになると考えました」
シニア世代のスタッフも多いため、子どもが親を紹介するといった事例も複数あるという。現在注力している海外人材の採用でも、信頼できる人の紹介であるリファラルが大きな効果を発揮すると見る。
「介護業界というと深刻な人手不足ばかり取り上げられますが、誇りを持てる職場を自分たちの手で作り上げることが、根本的な解決につながっていくのだと思っています」(神成理事長)
新卒採用にもリファラルを活用する企業が登場している。SNSに馴染みの深い世代は、当然リファラルとの親和性が高い。
アパート建築・賃貸経営のMDIだ。マイリファーを活用し、来年入社する300人の新卒のうち30人強を、内定した学生が友人や後輩を紹介する「内定者リファラル」で採用した。サークルやゼミなど、大学生の場合、タイプの似た学生同士はつながっていることが多い。“類友”にリーチできるため、効率のいい採用法なのだ。