「3人いる妹に、『自分たちが子どもの頃にどんなメッセージを読んだら元気が出たと思う?』と聞いて、きょうだいみんなでつくった合作です。あの手紙は、子どもでもわかるように漢字を全部小学3年までに習う字に制限してあります」

 その「手紙」を読んでみてほしい。ただし、いきなりそこにいくのではなく、ちゃんと最初から読み、本になじんでからお願いします。

(ライター・北條一浩)

■書店員さんオススメの一冊

『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』(酒井信著)は、『パレード』や『悪人』など吉田修一作品の魅力を解き明かすファン必携の一冊だ。リブロの野上由人さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 本書は、小説家・吉田修一と同郷、つまり長崎市出身(しかも同じ高校を卒業)で、西日本新聞に「現代ブンガク風土記」を連載中の批評家が、長崎の風土と吉田作品の関係を詳細に論じた文芸批評である。

 作品に「ヤンキー」や「作業員系」の男性が多く登場することについて、吉田が「漁業と炭鉱と造船」の街で育ったことの影響を指摘している。長崎の地区別の文化的な差異にまで言及できるのは、さすが同郷の強みである。

 吉田は最新刊の小説『国宝』で歌舞伎役者を描いた。この歌舞伎役者も究極の「肉体労働者」だと考えれば、吉田の「身体を資本に生きる人びと」への執着は明らかだ。

 本書を機に、多方面から「吉田修一論」への参入があるといい。特に、ジェンダー/セクシュアリティー・スタディーズからのアプローチに期待したい。

※AERA 2018年11月12日号