朝日新聞(4月10日)は、今回の事故の状況に詳しい防衛省関係者の話として「機体の欠陥や老朽化による不具合、整備不良が考えられる」と、墜落原因について報じた。

「しかし、UH-60は完成の域にあるベストセラー機の一つです。今さら機体の欠陥というのはまずあり得ないでしょう。老朽化については先に述べたように、それほど古い機体ではありません。陸自によれば定期点検を終えたばかりの機体ですし、師団長が乗るからには、飛行前点検も念入りに行ったでしょう」

 UH-60にはエンジンが2基搭載されている。仮に一つが停止してもしばらくは飛び続けられる。

「2基のエンジンが同時にトラブルを起こす可能性は低いのですが、万が一にもそのようなことが起きないように、製造時期の異なるエンジンを定期的にローテーションして載せ替えています」

 ただ、米陸軍の160件の事故のうち、少なくとも2件はエンジン故障で墜落している。過去にはトラブルが発生したエンジンを操縦士が停止しようとしたところ、正常なエンジンを止めてしまい、墜落したUH-60の事例もある。

「今回もどちらかのエンジンの調子が悪くて、爆発する恐れがあったので止めたら違うエンジンだった、という可能性はゼロではありません。それでも回転翼が慣性力で回り続けるかぎりは浮力が発生し、ゆっくりと機体を降下させることが可能です」

激しい突風「ダウンバースト」

 ただ、今回の事故ではバラバラになって浮遊する機体の破片が発見された。ヘリを水平に安定させることができず、かなりの速度で海面に激突したことがうかがえる。

「高度約300メートルを飛行するヘリを『ダウンバースト』が襲い、機体を立て直す間もなく墜落したのではないか、という人もいます」

 ダウンバーストとは、発達した積乱雲からの激しい下向きの突風で、たびたび航空事故の原因となってきた。そのため、主要空港などにはダウンバーストの発生を検出する特殊なレーダーが設置されている。しかし、宮古島周辺の空港にはこのレーダーは置かれていない。

「このようなことから、今回の墜落の原因は点検では見つけられなかった何らかの機体トラブル、もしくは気象の悪化、そのどちらかではないか、と考えています」

 現在、潜水艦救難艦「ちはや」などが現場海域を水中ソナーや無人潜水機を使って捜索している。機体が発見されればサルベージ船によって引き上げられ、フライトレコーダーとボイスレコーダーが回収され、墜落の原因の調査が始まる見込みだ。

「私は取材記者であるとともに陸自で部外者講師を務めていることもあり、行方不明となっている坂本雄一師団長とは15年に陸幕の広報室長になられたときからのお付き合いで、一時はしょっちゅうお会いし、広報に関する意見交換をしていました。同僚や部下に慕われていた方で、よいうわさしか耳にしたことがありません。なので今回、事故第一報で、お名前を見たときは信じられない気持ちでした。陸自全体もショックを受けている感じです。行方不明になってから、これだけの日数が経ってしまったので、生存は難しいかなと、諦めている気持ちはあるのですけれど、早く見つかってほしいと思います」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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