「横浜国立大経済学部に合格した生徒が明治大政治経済学部に落ちてしまった。体調が悪かったのか、と生徒に問い質したら、全力を尽くしたという。今年の入試は、私立大難関校で受かるはずの実力を持った生徒がダメだったという話をよく聞きます」
神奈川県の県立高校進路指導教諭がこう振り返る。
その理由はすぐにわかった。人気のある私立大学が入学者数を減らしたことで難易度が高くなったのである。
これは大学の都合である。文部科学省の指導を受けてのことだ。
大学設置基準という、国が作った大学のルールによれば、大学は学生定員に対する在籍者数の割合(定員充足率)を2018年度は1.1倍にしなければならない。つまり、定員イコール在籍者数に近づけなさい、ということだ。
大都市圏の国立大学は第1志望の受験生がほとんどなので、合格者数は限りなく入学者数に近い。しかし、私立大学は早慶などどんなに人気校であっても、合格者イコール入学者はありえない。併願で東京大、一橋大、東京工業大に受かれば、ほぼこちらに入学するからだ。
したがって私立大学のほとんどは定員より多めに合格者を出す。当然、そのさじ加減はなかなか難しい。難関私立大学の関係者がこう話す
「長年の経験から合格者数を出しますが、入学定員が規制されるようになってからきわめて難しくなりました」
収容定員(卒業するまでの年限に在学する総学生数)が8千人以上の大規模校、および4千~8千人の中規模校において、入学定員のうち入学者数の割合が、次の上限を超えると私学助成金がカットされることになった(以下、カッコは中規模校)。
15年度までは1.2倍(1.3倍)、16年度1.17倍(1.27倍)、17年度1.14倍(1.24倍)、18年度1.1倍(1.2倍)と年々厳しくなっている。
18年、法政大は一般入試志願者数で初めて12万人を超えた。一方で合格者数について、16年は2万3192人だったのが、18年には1万7548人となり、5千人以上減っている(河合塾調べ)。1.1倍ルールを守るためだ。