写真:gettyimages
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 子育てスキルを部下育てに生かし、プレゼン力は育児に還元。そんなふうに、仕事と子育てを自由に行き来しているパパたちがいる。

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 週末に自宅で夕食を囲む風景、保育園の送迎時のドタバタエピソード、家族旅行中のとびっきりの笑顔……。

 ごく自然体で子育てを楽しむ姿が頻繁にSNSに発信されている。発信者は、いずれも男性経営者。仕事では“社長”の立場だが、それを忘れさせるほど身近な語り口に、彼らの仕事仲間からたくさんの「いいね!」が集まる。

 日頃、働き方やリーダーシップに関する取材をする機会が多い筆者が、こんな男性経営者が増えてきた、と気づいたのは1年ほど前のこと。

 2000年代初めには、男性、しかも社長となれば、「仕事に没頭し、家庭は妻に任せる」というイメージが根強かった。10年には、「イクメン」という言葉が「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10入りを果たしたが、話題になる理由は“レア”な存在だったから。「育児する男性」というのは世の中のごく一部で、表面的な育児参加だけで満足する父親を揶揄する「なんちゃってイクメン」という言葉も聞かれた。

 仕事と子育ての両立と言えば、女性の話と取られることも多く、男性に当事者意識は薄かった。しかし今、男性と子育ての関係は、根底から変わろうとしている。拙著『子育て経営学』(日経BP社)で、40代以下の男性経営者たちに子育てについてインタビューを重ねたところ、面白い共通項が見えてきた。

 子育てをすることでもてはやされるイクメンはもう古い。当然の役割、生活の一部として子育てする“ポストイクメン世代”の最大の特徴は、彼らが「公私ミックス」で子育てと仕事を同一線上で考え、双方に向き合っていることだ。

 例えば、子育てで重視している価値観や手法を、仕事のマネジメントにも積極的に応用している。子育てでは、子どもが「やりたいこと」を自ら発見するために多様な体験機会を与え、失敗から気づきを促して成長機会に生かす。小さな変化を観察し、褒めて自信を育てる。これらは、そのまま「部下育て」や「チームビルディング」にも当てはまるという。

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