「辛」と「木」に、オノを表す「斤きん」を組み合わせて生まれたのが「新」。ここでの「辛」は木を選ぶ際に使う針を表す。位牌(いはい)を作る際には、この針が当たった木を材料にしていたようだ。つまり「新」は、針が当たった木を「斤」で切ることを表し、木を新しく切り出すので「新しい」という意味になったのだ。

 同じ「辛」という文字から生まれた漢字にも、これだけの背景がある。

 草むらを表す文字と「死」を組み合わせた形とされる「葬」の字には、古代中国の、死体を草むらに捨てて骨になってから埋葬した風習が表現されているし、「しろ」「もと」などの意味がある「素」は、糸を染める様子から生まれた。糸束を鍋で染める際、結び目部分は染まらずに白く残るからだ。

 なりたちをひもとけば、たった1つの漢字の向こうに悠久の歴史が広がっている。

(構成 生活・文化編集部 塩澤 巧/イラスト もりいくすお)

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