成長過程にある小学生の塾選びは特に慎重にしたい。生活スタイルや子どもの性格に合う塾を選ばなければ、合格は難しい。
【塾選びの参考に!有名塾の合格者数とボリュームゾーンはこちら】
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首都圏の難関私立女子中に通う娘(14)がいる女性(53)は「あの時転塾していなければ、娘はこの学校に合格していなかったかも」と振り返る。小学1年から公文式教室に通い出し、3年になると中学受験を視野に入れて塾を検討。自分も夫も地方出身で、中学受験の経験がない。週刊誌などで情報を収集し、中学受験特集の記事を見て、難関校に特化した小規模の塾に目を留めた。
「こぢんまりとした面倒見の良さそうな塾で、レベルの高い学校を目指しているのが決め手になりました」(女性)
3、4年次は順調だったものの、新5年クラスに進級してから変調が表れた。塾から、「授業中にしょっちゅうトイレに行く」などと連絡が入るようになり、成績も下がり始めた。中学受験をする場合、一般的に新4年といわれる小3の2月から塾に通い出す。4年次のカリキュラムは緩やかだが、5年次から学習の内容が大幅に増える。娘の通う塾は、それが顕著なようだった。
「宿題の量がこなしきれないほど増え、授業のレベルも格段に難しくなりました。特に理科の先生はこだわりが強く、中学、高校レベルの内容が交じることもありました」(女性)
勉強もサボりがちになり、精神的に不安定なわが子の様子を見て、「受験は無理かも」と思ったという。そんな折、名門指導会代表の「塾ソムリエ」、西村則康さんを知り、相談したところ転塾を勧められた。
「転塾してうまくいくのか、私は半信半疑でしたが、西村先生と面談した娘がすっかり乗り気になりました」と女性は話す。
5年の4月から、大手の難関校に強い塾に転塾する。初めは中くらいのクラスからスタートしたが、メキメキと成績が上がりトップクラスへ。みごと第1志望校に合格した。
「成績によるクラス替えもあって、精神的にきついのではないかと思いましたが、娘は負担に感じなかったようです。テキストも小学生が読んでよくわかるように工夫されており、塾のテストも本番に向けた訓練になっていました」(女性)
中学受験には学校で習わない内容も必要で通塾が欠かせないだけに、塾選びが大切になる。表「合格者数とボリュームゾーン」はそれぞれの塾が、どの偏差値ゾーンの中学に多くの合格者を出しているかを表している。首都圏では日能研が生徒数トップで、森上教育研究所代表の森上展安さんは「中学受験を広げた最大の貢献者」と話す。四谷大塚、SAPIX、早稲田アカデミー、栄光ゼミナール、市進学院と続き、この6校が首都圏全体に校舎を展開している。難関校に強いのはSAPIXで、早稲田アカデミー、四谷大塚が追う。
塾ソムリエの西村さんは言う。
「難関校の合格者数は気になりますが、塾選びはそれだけにこだわらず、テキストや授業の内容、子どもの性格なども見て判断すべきです」
表「タイプ別に見る中学受験塾」は、西村さん監修のもと、五つの観点から塾をタイプ分けしたものだ。志望校だけでなく、子どもの性格や親の負担など、総合的に塾を判断できるようになっている。たとえば難関校を目指しSAPIXに入れても、ゆっくり考えるタイプは授業についていけなくなる可能性がある。早稲田アカデミーは体育会系の元気な塾だが、繊細な子どもが萎縮して悩んだ例もあるという。大手塾の場合、校舎によって雰囲気も変わるので、入塾前に必ず見学したほうがいい。
ほかにもSAPIXは毎週テキストを配布されるので、その整理には親の手助けが必要だ。稽古事などと両立させたいなら、1教科から受講できる栄光ゼミナールがお勧めだという。
大手以下多数の中・小規模が続く。小粒ながらきらりと光る塾もある。ただし地域が限られていたり、特定の学校に重点が置かれていたりすることもあるので、事前にチェックが必要だ。
「(中・小規模塾は)熱意を持っている先生が多く、面倒見もいい。ただし塾の方針と合わない子は逃げ場がないので、通塾がつらくなってしまいます」(西村さん)
急に成績が下がったり、最下位のクラスでとどまっているようならば、転塾も検討してみよう。クラスの雰囲気や先生になじめない場合には、校舎を変えるだけで改善されることもある。より規模の大きい校舎に移ると選択肢が増え、学力に合ったクラスに入ることができる。
「転塾するときは、通っている塾よりもカリキュラムの進度が遅い塾を選ぶこと。遅い塾から速い塾に移ると、習わずに終わる単元が出てしまいます」(同)
転塾の時期は、できれば5年の終わり、それを逃したら6年の夏休み前が限度だという。(ライター・柿崎明子)
※AERA 2018年9月24日号