「ストイックに、自分の美学を貫き、頑張っているところを一切見せない。だから彼女はゲイにも人気なんです。年齢を重ねても歌も踊りも変わらないから、彼女のライブは、他のアーティストみたいにサーカス化させて、劣化をごまかす必要がない。本当にすごいと思います」

 引退発表後、テレビや雑誌のインタビューで彼女が語る内容は、いたって普通だった。

「(コンサートは)いつも吐きそうなくらい不安」「ものすごくテレビっ子」「子どもに毎日弁当を作った」「子離れできていない」「肉が好き」……。

 ライブでは完璧主義の一方で、垣間見える素顔に親近感がわく。

「いくつになっても、ミニスカートははくつもりです。人に止められるまではね(笑い)」

 10年前、30歳で愛犬と一緒にAERAの表紙に登場した際には、そう語っていた。

 本当は20周年で引退する予定だった。それがかなわなかった後、彼女は5年かけて、引退と向き合ってきたという。その思いにはファンも気づいていた。

 フリーライターの女性(46)はこの5年間、「最後のカウントダウンだと思って」彼女の姿を目に焼き付けてきた。

「20周年の時、『時々、引退について考える』と語っていて、残された時間はもうあまり長くないなと感じました。でもSMAPと違い、引退発表から1年あったので、ちゃんとお別れできたことはありがたかったです」

 引退発表の日、「衝撃すぎて高熱で寝込んだ」というピラティスインストラクターの女性(32)は、その引退に背中を押された。ちょうど勤務先から、新しくできる仙台支店を任せたいという打診を受けた時だった。13年住んだ東京を夫婦で離れることを決めた。

「出身地でもある東北のために何かしたいという思いが強くなっていた時期に、安室ちゃんの引退を聞いて、私も夢を実現しようと思った。引退を聞いてなかったら、きっと決断できていなかったと思います」

 安室自身は引退についてこう語っていた。

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