Touchy Feelyでは、“feedback is gift”が合言葉になっていた。おたがいに率直な本音のフィードバックをすることで、相手からどのように受け止められているかについて理解が深まり信頼関係構築に資する、という考え方である。筆者は、1Fの事故に関するプレゼンテーションをする際、可能な限り、参加者にフィードバックをもらえるよう、アンケート用紙を配ってお願いした。
日本人的感覚からすると、事故の当事者が説明会を開催した際に感想文をお願いするというのは、ありえないと思うだろう。ところが、アメリカ人は逆に、「ケンジは、事故の教訓をより効果的に伝えるために改善しようと努力していて、しかも自分たちの意見を参考にしようと思っている」と、好意的に受け止めてくれた。
実際、多くの参加者が詳細なフィードバックを書いてくれ、4年間で1300件以上の貴重なデータが蓄積された。これらフィードバックを熟読し、次のプレゼンテーションに反映させることで、プレゼンの効果がどんどん高まり、それが口コミで広がり、次々と講演依頼が全米から寄せられる、という好循環につながっていった。
たとえば、渡米初期のころにもらったフィードバックには、「ここはアメリカであり直接迷惑をかけたわけではないのだから、事故について謝罪するのはやめたほうがよい。むしろ堂々と、教訓を伝えるために来たことを明言すべき。さらには、ジョークで場を和ませてから、個人的なエピソードも交えてプレゼンするとなおよい」と書かれていた。
米国の関係者が、事故の当事者である東京電力から真摯に学ぼうとする強い姿勢をもっていることにも驚かされた。多くの原子力発電所では、筆者のプレゼンの様子をビデオ撮影し、直接参加できなかった職員を含め全員必修の研修資料として利用していた。また、米国原子力規制委員会からはたびたび講演依頼をいただき、なかには委員長自らが出席し、熱心にメモを取るということもあった。