通常の攻撃時にはだいたい173ぐらいだったBPMが、押せ押せムードになってくると10ぐらいずつ跳ね上がっていく。テンポを管理している人がカウベルでコントロールしているが、攻撃がのってくると、ブラバンとは違うスタンドの補欠部員が太鼓などの鳴り物を使ってどんどん走っていく。すると、ブラバンの小太鼓チームが裏拍で拍子を取っていたのが崩れて表拍になる。となると、結果、追っかけっこになってテンポが走るという、ライブっぽいグルーヴ感がアルプススタンドには確実にあった。そして、そのグルーヴの輪っかはプレイにまで波及したのか、更に攻撃に加速がかかっていき、連続追加点が入っていくのを目撃。その時BPMは195まで上昇していた。

 野球は面白い。というか、高校野球というコンテンツは、野球の面白さを引き出し過ぎとすら思えた。これだけその面白さを引き出せる高校野球なら、歴史や利権も絡むだろうが、球場は甲子園だけに拘らず、ドーム球場でやったっていいだろう。まだまだ改善点は見つかる。また、ライブである高校野球は一方で観客が作っている。「興行論」を教育に盛り込んだらどうだろう。お金の流れと使い道を球児たちに教えるのだ。野球を通じて人生のマネジメントを教えるのである。都合悪いという大人たちはいるだろうか。ま、いい、とにかく現場には行ってみるものだ。

AERA 2018年9月3日号

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マキタスポーツ

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マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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