アスリートやモデルなどフィジカルを武器とする人々は、食生活にも気を遣うもの。ミス・ユニバース日本代表に選ばれた美馬寛子さんは、体づくりのために試行錯誤した結果、ある方法に辿り着いたと明かす。
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173センチの身長がさらに高く見えるスラリとした体形。2008年にミス・ユニバース日本代表に選ばれた美馬寛子さんは、こう断言する。
「この10年、私の体は、食が一番のベースになってきました」
学生時代から陸上の走り高跳び選手として全国大会にも出場していた美馬さん。典型的なスポーツ体形で、モデルとしては筋肉が過剰だった。そこで、あえてエクササイズはせず、食生活で体形を調整してきたという。
最初は極端な食事制限をいくつか試したが、どれも失敗した。大好きだったパスタやピザなどの炭水化物を抜いたときは、苦しんだ割に効果がなく、リバウンドもした。
そんな中で唯一成功し、8年間続けているのが、肉だけを抜く「ペスカタリアン」の食生活だ。よく知られているベジタリアンは、タンパク質を豆類で代用することが多いが、ペスカタリアンは魚介類(ペスカ)は食べるのが特徴的だ。
「食べたものがおなかに影響しやすい体質」だった美馬さんは、肉を食べることをやめたところ、まず、便秘が治ったという。
実は昔から肉はそんなに好きなほうではなく、逆に魚を抜くことは考えられなかった。徳島の魚市場の近くで育った美馬さんは、おやつ代わりだったちりめんじゃこを、今もよく食べる。
「結局は、幼少期から食べ慣れたものが体にとっていいのかもしれないと感じています」
大好きな炭水化物も食べたいだけ食べるが、その代わり、一緒に食べると脂肪になりやすい砂糖は、できるだけ口にしない。家の中に砂糖は置かず、どうしても必要なときはアガベシロップやはちみつで代用している。
朝食は、リンゴ半分、ニンジン中2本、ショウガ1かけをジューサーにかけて1杯飲むだけ。パーソナルトレーナーに勧められて試したところ、体の目覚めが早く、午前中も体が動きやすいことが実感できたからだ。
食と体の変化を、敏感に気づけるようになったのも、ペスカタリアン生活を始めてからだと美馬さんは振り返る。
「例えば今おでこにニキビができていますが、原因はナッツ。昨日の外食でドレッシングに紛れ込んでいたのでしょう」
でも、制限はゆるやかだ。
「あまりにもストイックに取り組むと、それ自体がストレスになり、ホルモンバランスを崩してしまいます」
仕事の関係でどうしても外食が増えるので、食事コントロールは1日ではなく1週間でとらえる。メニューを自分で選べない夜の外食は週3回までと決めていて、家では不足しがちな野菜を多く取る。
美馬さんは現在、ミス・ユニバース日本代表などの女性たちに、食を含めた生活習慣などの指導もしている。食については「自分が人体実験したことは伝える」が、それをそのまま勧めることはしない。「適切な食生活」は、一人ひとりの生まれ育った環境やライフスタイルによって少しずつ違うことを、実体験してきたからだ。
「ネットを開けば情報があふれている中で、何が自分にとって最適で実現可能なのかを、自分で判断し、実践していくことが大事ですね」
(ライター・豊浦美紀)
※AERA 2018年8月27日号より抜粋