5坪弱の一画を約20年のローンを組んで購入。本の形をした引き戸をグイッと開けると、スリッパが置いてある。まるで本好きの親しい友人の家みたいだ。

「実は100年続く本屋というコンセプトがあるんです。昔は本屋というものがあったらしい、今も1店残っていたよね?と、本屋として最後まで残りたい」

 前出の2人のほか、海沢めろんさんや東浩紀さんら作家や批評家による棚が並ぶ。常に小規模出版社の全点フェアも展開、取材時には左右社を取り上げていた。読書会もよく開くほか、書店経営を目指す人のために、業界の人を講師に招いたワークショップも活発に催している。

 そして、奥のガラス戸の向こうにはギャラリーが。

「隣は父が運営しています。父はギャラリーを、ぼくは本屋をやりたい。だったら隣同士で、できないか?と思ったときにここの物件があったんです」

 ギャラリーを借りてドアの向こうは読書会、こっちは通常営業という風景もすっかり日常になったというから、これも新しい書店スタイルといえるだろう。

 思いをカタチにしたい。そのために人がいて、本があって、場所がある。お金も必要だが、この三つがあれば、小さな本屋を生み出すことができそうだ。

AERA 2018年8月13-20日合併号より抜粋