上司からは「結婚は」「彼氏は」と迫られ続けた。セクハラという言葉もない時代。パートナーのことを男性に置き換え、世間話を試みてみたが、すぐに辻褄が合わなくなった。
五十嵐さんがカミングアウトしたのは、退職しフリーライターとして歩み出した後だ。人生の契機、「アラフォーの決断」だった。会社組織から自由になった身だからこそできたことだった。自治体や大手企業を回って性的少数者関連の啓発活動に奔走した。9月には同様の事業を展開する新会社の設立に向け準備中だ。
「実は中小企業にこそ圧倒的に当事者がいる。これから新しい日々が始まります」(五十嵐さん)
新しくできた17歳年下の同性パートナーとは遠距離恋愛中だ。多忙でなかなか会えないが、五十嵐さんにとっては人生の大切な糧だ。(ライター・加賀直樹)
※AERA 2018年7月30日号より抜粋