赴任中にはベビーシッター費用の補助などを受け、帰国の際も会社が確保する枠があったため、子どもの保育園に不安はなかった。

 加えて「育児コンシェルジュ」制度にも助けられた。子どもの預け先について相談に乗ってくれる専門家が人事部に常駐する制度で、ベビーシッター探しや、小学校に上がる長男の学童を探す際に利用した。

「自宅周辺の地図に学童の施設の場所をすべて記した、オリジナルのリストをつくってくれました。丁寧な仕事がとてもありがたかったです」

 独自の学童保育「MC学童」もある。子どもの長期休暇中、勉強や遊びなど独自のプログラムを1週間単位で提供する。社員が子どもと一緒に出勤し、子どもだけバスに乗って学童先に移動、一日を過ごす。親の業務が終わるころ会社に戻ってくる。

「今後のキャリアについて考えることはあっても、それは働き手として。女性だからとか、子どもがいるからということの悩みはありません」(濱本さん)

 各社がこうして新たな働き方を導入するのは、

「福利厚生ではなく、あくまでも会社全体の競争力強化のための働き方改革です」(三井物産人事総務部ダイバーシティ経営推進室の高城紘子HRマネージャー)

 つまり、社員を「甘やかす」改革ではない。総合商社は、自らが時代に合わせた成長を目指す一方で、社員にも新たな成果を求めているのだ。(編集部・川口穣、野村昌二)

AERA 2018年7月23日号より抜粋

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