総合商社が絶好調だ。世界経済の成長をうまく取り込み、収益につなげた。一方で「働き方改革」を進める。社員の状況や志向に合わせて働ける。すなわち、短い労働時間で同じ業務をこなすモーレツな効率化の現場を訪ねた。
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勤務時間を朝にずらすだけではなく、遅くもできる時差出勤制度が三井物産にはある。所定労働時間数を維持したまま定時(午前9時15分~午後5時半)から15分きざみで最大90分、前後に勤務時間をスライドさせられる仕組みだ。
教育分野の事業開発を担当する田子(たご)友加里さん(30)は昨年、長男を出産した。育休から復帰したのは長男が10カ月を迎えた今年4月で、金属資源本部に勤める夫の三輪健太郎さん(30)とともに、そろってフルタイムで働いている。
ふたりはこの仕組みをうまく活用し、残業もこなしながら子育てと仕事を両立している。月・水曜日は友加里さんが出勤時間を遅くして、保育園への送りを担当。夕方は出勤を早くした夫の健太郎さんがお迎えに行く。火・木・金曜日はその逆だ。勤務時間が遅い日は、残業したり会食に参加したりもできる。
友加里さん、健太郎さんが口をそろえる。
「残業できる日、早く帰る日がはっきりしたことで、仕事の仕方にメリハリがつきました。仕事により集中できていますね」
「メリハリ」以外にも、業務効率化のメリットは大きい。友加里さんは担当する関連会社に合わせて月・水曜日の始業を午前10時にしている。定時勤務なら、いったん出社してから関連会社に向かう必要があったが、直行できるようになり、移動時間が短縮された。海外とやり取りする部署では、相手国と業務時間を合わせるといった利用法もされているという。
社内全体にも効果が広がっている。この制度によって、時短勤務していた社員のうち25%がフルタイム勤務に復帰し、60%が時短分を減らした。
時間の使い方は丸紅も工夫している。化学品本部に所属する富山武識さん(38)は6月、滋賀県に出張した。琵琶湖に繁茂し、水質などの悪化を引き起こす水草の除去方法を探るためだ。だが富山さんの日々の業務は、輸入した石油や鉄鋼など資源の余りを肥料に加工して使用できるようにする「肥料原料ビジネス」。琵琶湖の水草は本来のテーマではない。この出張は会社が推し進める新制度、通称「15%ルール」に基づくものだ。