お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の新連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。
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「感動をありがとう」について。
90年代以降、オリンピックはもちろんのこと、サッカーの国際戦は“大網でガバッ”と感動をすくい取れる貴重な機会となった。「感動をありがとう」はその大漁旗と言える。
苦手だ。
今回は「感動JAPAN」対「非感動JAPAN」とを対戦させる形式で、あのW杯の狂騒を再現したい。
日本が番狂わせでコロンビアに勝った翌朝のテレビでは早速「感動JAPAN」の攻撃が展開された。前線の前園真聖や武田修宏のところへ、トップ下の小倉智昭、加藤浩次、国分太一ら攻撃的司会陣がボールを供給する。
「監督交代劇から、正直、日本は難しいんじゃないかという声もありましたよね」
対して前線陣も応える。
「戦前の予想は厳しかった、でも、相手のファウルを誘ったのは、日本が怯むことなく攻めたからです!」
「非感動JAPAN」はいきなり防戦一方だ。「感動JAPAN」の波状攻撃に捻くれたネット民が必死のディフェンスで応じる。曰く「感動を強要されるのは苦手」とか「小倉さんのドヤ顔がウザい」とか「前園、今回のW杯でどんだけ儲けるんだ?」とか。中でも出色だったのは「飲み屋でやってる裏パブリックビューイング、あれは違法」というカウンター攻撃だ。点こそ入らなかったものの良いイマジネーションだった。
そして、1次リーグ3試合目。2戦目のセネガル戦で引き分けたことで、ややピッチの様子が落ち着き始めた。その上で、あの消極的突破。逆に「非感動JAPAN」からの攻めに「感動JAPAN」が苦しめられることになった。
両サイドから「何が侍だ!」と揺さぶられ、揚げ句に「ボルゴグラードの忖度」なる強烈なゴールも決められた。「感動JAPAN」の秘蔵っ子小柳ルミ子の運動量には期待が寄せられたが、「闘わずして逃げ切ろうとした、私は泣きそうだった……」というまさかのオウンゴール。