看護学生の女性は「産科は生まれるだけの場所じゃないのだとあらためて気づかされました。赤ちゃんを亡くした母親にも寄り添える助産師になりたい」という。「命の大切さが伝わってくる本」だと、購入して病院の待合室などに置いてくれた産婦人科医もいた。

 本を読んだことを機に、体験者の声なき声を多くの人に聞いてもらいたいと行動を起こした人もいる。都内在住の役者、井川いずみさん(36)は8月に死産をテーマにした公演を行う。

 趣味の本屋めぐりの最中に、この本の帯の「50人に1人が死産と知っていますか?」が目に飛び込んできた。本を開くと知らないことばかりが書いてあった。ツイッターに「たまたま立ち読みした(中略)産んだ子がすぐ亡くなって苦しんでいる人たちがいることを、その亡くなった赤ちゃんの為に動いている人たちがいることを私は知らなかった」とつぶやくと、フォロワーの一人から「経験者です」と返信があり、1時間ほどメッセージをやりとりした。本に書かれている現実がこんな身近にあったことに驚いた。

「ずっと言えずにいた人がここにもいた。この現実をもっとたくさんの人に知ってもらいたいと思いました。この人に応えるには何ができるんだろうと考えたとき、私には台本を書くことかなと思ったんです」

 演劇の台本を5日間で一気に書きあげた。Iccokaという座組を立ち上げ、8月25、26日に都内で上演を予定している。タイトルは「1/50」だ。

 本の「はじめに」にこうある。「この本を読んで、1人でも多くの人に、そんな優しい想像力を持ってもらえたらうれしい」。その輪は少しずつ広がり始めている。(編集部・深澤友紀)

AERA 7月16日号より抜粋

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