時代の中で街の姿は変わり、家族も娘たちの結婚によって、バラバラになっていく。

「在日という日本でも特殊な立場の家族を描いたつもりが、自分たちの家族のことのように思えた──というお客様の声をいただきました。故郷を離れざるを得なかった人々の物語として、あるいは旧来の家族制度の崩壊に重ねて観てくれているようです」

◎「焼肉ドラゴン」
全国で公開中。数々の賞を総なめにした演劇界の金字塔、待望の映画化。配給:KADOKAWA ファントム・フィルム

■もう1本 おすすめDVD「かぞくのくに」

「焼肉ドラゴン」の中でも話題になる北朝鮮への帰国事業。

 1959年から84年にかけて、当時、朝鮮総連は北朝鮮を「地上の楽園」と宣伝し、日朝両政府の了解のもと、在日朝鮮人ら9万3千人が北朝鮮へと帰国した。

 ヤン・ヨンヒ監督の「かぞくのくに」が描くのは、「焼肉ドラゴン」の後日談的な物語だ。朝鮮総連の重役である父の勧めで帰国事業に参加したソンホ(井浦新)は、病気の治療のために25年ぶりに日本へ戻る。妹のリエ(安藤サクラ)や家族はソンホの帰国を喜ぶが、ソンホのそばには、常に「同志」がいて監視をしている。父親との葛藤、家族に対しても本音で話せないソンホの抑圧が、作品の中で静かな緊張感と共に表現される。

 ヤン監督は在日朝鮮人2世で、両親は朝鮮総連の幹部。3人の兄は帰国事業で北朝鮮へ行き、一番下の兄が監視付きで戻ってきたことがあり、本作は監督自身の実体験をもとに作られている。北朝鮮が注目を浴びている今、あらためて観ておきたい作品だ。

◎「かぞくのくに」
発売元・販売元:株式会社KADOKAWA
価格3800円+税/DVD発売中

(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年7月9日号

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