AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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■いま観るシネマ
伝説の舞台「焼肉ドラゴン」が、映画になって帰ってきた。舞台は日韓合同で製作され、2008年に日本の新国立劇場で初演。朝日舞台芸術賞グランプリをはじめとする演劇賞を総なめに。再演されるたびに話題を呼び、08年、11年にはソウルでも上演された。
今回の映画化は、舞台の作・演出を手がけた鄭義信監督自身によるものだ。
「これまでも脚本家としては、『月はどっちに出ている』をはじめとして、映画に関わってきましたが、監督をやるのは尻込みしていたんです。演劇にくらべて映画は桁違いの予算が動きますから。実は映画化の話は2度目で、たくさんの人が期待してくださっているのなら、と、思いきってメガホンをとりました」
映画の舞台は万国博覧会が開催された1970年。高度経済成長にわく関西の地方都市にある小さな焼き肉店「焼肉ドラゴン」を営む在日韓国人の家族と、そこに集う人々を描いている。
故郷を喪失し、日本で家族を作った父親をキム・サンホが、愛情深い母親をイ・ジョンウンが演じる。2人とも、韓国を代表する名優だ(イ・ジョンウンは今年4月に日本公開され、話題になっている「タクシー運転手」にも出演)。
「3姉妹を演じた真木よう子さん、井上真央さん、桜庭ななみさんは、才能のある女優さんです。頭がよくて、画面の中で自分がどう見られているかわかっている。思いきりよい演技をしてくれました」
たとえば井上真央が演じた次女は、これまでの印象を覆すような激しさと情の深い女性を演じて、印象的だ。
「映画は舞台と全く違います。芝居は繰り返し何度もやりながら、みんなで完成形に作り上げていく。映画はある瞬間の輝きが大事なので、エモーショナルな部分はリテイクせずに1回で撮りました」