これに対して山田教授は、「結局、やりやすいところから対策を立てるわけですよ。で、中小企業労働者や非正規雇用者、未婚者への対策は一番後まわしになる。でも、そういう人たちが結婚して、子どもを産むようにしないと少子化対策の成果は出ないわけです。なので、今回の少子化対策だけで改善するか、疑問です。大企業の正社員以外の大多数の人たちは置いてけぼりになるのではと、不安です」。

■少子化の主因に無策

 山田教授は、こうも言う。

「少子化の主因は、日本人の4人に1人が結婚しないで、子どもを持たないことです。しかし、今回のたたき台を見ると、そちらの対策への言及はありません」

 令和4(2022)年版の「少子化社会対策白書」によると、20年、50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合は、男性28.3%、女性17.8%だった。

「そんなわけで、都会のパワーカップルはますます子どもを産みやすくなる。半面、地方の収入が不安定な人は結婚もできなければ、結婚しても子どもをたくさん持てない。男性の収入が右肩上がりに増えたころと違って、子どもが将来の生活にとって足かせになっている。子どもを産んで育てると貧乏になってしまうからやめておこうとか、子どもは1人だけにしておこうと思ってしまう。この構図は、少なくとも今回の対策では変わらないでしょう」

■マッチングアプリで激化

 21年の国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、理想の数の子どもを持たない理由として挙げられたのは、「子育て教育お金がかかりすぎる」が52.6%で最多だった。

「なので、高等教育の費用を軽減すれば、多少は子どもの数は増えるのではないか、というのが私の見立てです」

 ただ、若年層の状況は多様化しており、対策は難しいという。

「気になるのは、地方の女性の地位が低すぎることです。地方で女性が活躍できる場を広げるとともに、非正規雇用者へのサポートが必要でしょう。非正規雇用者は都会にも大勢いますから」

 最近は結婚相手を探す際、「マッチングアプリ」の利用が広まりつつあり、結婚相手選びの条件がますます厳しくなってきているようだ。

「大企業に勤めて生活が安定している人と、そうではない人との格差が激しくなっている。その格差が解消されないかぎり、結婚しない人がたくさん出てくる。それは男性だけではなくて、女性にも及んでいます」

 結局のところ、この問題に真摯に向き合わなければ、少子化対策はまた失敗に終わるだろう。残念ながら見通しは暗そうだ。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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