■届かぬ多数派の声

「しかし、地方に目を向けると正社員同士の共働き世帯なんて少数派です。なので、育休はとれないし、もともと保育所は余っていた」と、山田教授は言う。

 総務省の「平成29(2017)年就業構造基本調査」によると、夫婦ともに正規雇用の共働き世帯は3割ほどしかおらず、6割近くを正規雇用と非正規雇用からなる夫婦が占める。

 山田教授は3年前、自らが座長を務めた財務省財務総合政策研究所の「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」で、「日本の少子化対策の失敗の原因」について次のように報告した。

<「大卒」「大都市居住」「大企業勤務」に偏った政策が行われ、「非大卒」「地方居住」「中小企業労働者、非正規雇用者、自営業者、フリーランス、(100万人以上いる飲食を伴う接客業従事女性)」の声が届いていないのでは>

 そして山田教授は今、あらためて指摘する。

「これは『男女共同参画』でも同じ構図です。昨年、私は岸田首相の前で非正規雇用者や自営業者、フリーランスの人たちへの対策を述べたのですが、それに対して出てきたのは国民健康保険の保険料免除と子育て給付金の検討くらいです。規模が小さすぎて、ほとんど対策になっていません」

■大企業優先の対策

 先月、岸田首相は少子化対策の一環として、男性の育児休業の取得率の目標を25年度に50%に、30年度に85%に引き上げることを明らかにした。それに先立ち、今月1日から従業員1千人を超える企業は、男性従業員の育休取得率を公表することが義務づけられた。

 だが、日本の企業の従業員数における中小企業の割合は約7割である。なぜ、少数派の大企業から男性の育児休業取得率公表を義務化したのか?

 厚労省の担当者に尋ねると、「従業員1千人を超える企業にまずは育休をとっていただくことで社会的な機運を醸成していく。そのようなねらいで審議会で議論が行われ、この制度がつくられました。中小企業につきましては、今後の施行状況を見ながら、と思っております」。

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少子化の構図は変わるか