

野球離れが進む一方、野球をしたくてもできずにきた人たちがいる。女性たちだ。環境の整備にともない、その競技人口が増えている。
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「たのむぞー!」
「みせてくれー!」
シーズン真っただ中の女子プロ野球。この人がバッターボックスに立つとひときわ大きい声援が上がる。埼玉アストライアの強打者・川端友紀さん(29)だ。東京ヤクルトスワローズの川端慎吾選手を兄に持ち、小学校3年生のとき、父が監督を務めるリトルリーグで野球を始めた。
「初めて練習でキャッチボールをしたとき顔にボールがぶつかったんです。すごく痛かった。それを見て父は、私が野球をやめると思ったようですが、私はむしろもっとうまくなりたいと思いました」
兄は子どものころから「甲子園に出て、プロ野球選手になる」という夢を口にし、実現していった。
一方、川端さんは小学校を卒業すると野球を続ける道がなくソフトボールに転向。オリンピック出場に目標を切り替えた。ところがソフトボールは北京五輪後に実施競技からはずれる。高校卒業後、実業団に進むものの喪失感を埋めることはできず退団。スポーツ用品店で働き、2009年、女子プロ野球の第1回トライアウトを知り参加する。
「久しぶりにやった野球は新鮮で、楽しくて仕方ありませんでした」(川端さん)
ソフトボールと野球は一見似た点も多いように見えるが、どれくらい違うものなのか?
「全く別ものです。野球の技術はプロになって一から身につけました。ソフトボールは反射的な判断や動きを多く要求されるのに対し、野球は若干の間があり、その駆け引きも大事です」
スター選手として、女子プロ野球の人気を牽引してきた。昨年はプロ入り後、念願の初ホームランを達成。今シーズンは5年ぶりの首位打者を狙う。
「続く世代の子たちに憧れられるような存在になって、女子野球を引っ張っていきたいです」(川端さん)
女子野球は1997年、鹿児島県の神村学園高等部に初の女子硬式野球部が創設され、10年、女子プロ野球リーグが誕生。以後、高校の女子硬式野球部は27校に増え、競技人口も軟式なども加えると約1万5千人いるとみられている。今年3月に発表された「小中学生の女子が将来就きたい仕事」(アデコ調査)では、野球選手がトップ10入りしている。