ソマリアの隣国であるジブチでは、その当時すでに海賊への対処にあたる10カ国以上の軍が活動していた。旧宗主国のフランスは、ジブチが独立した1977年から空港に基地を置いており、スペインやドイツの軍も海賊対策として駐留していた。
「6日間という短い期間で、ジブチの大統領と面会し、アメリカ、フランスの基地も視察し、意見交換もしました。エチオピア、バーレーン、UAEという近隣諸国もまわり、国際社会からも日本の自衛隊がジブチに拠点を置くことは歓迎されているな、という空気もつかみました。例えば、軍の病院施設を持つフランスは二国間合意があれば自衛隊の使用はOKだとしてくれました」
一方、日本国内では、自衛隊の海外拠点の設置について議論が続いていた。
「自衛隊の海外拠点の設置は不可欠」との考えに対し、「恒久化、常駐化になる」「実態は海外派兵」などの反対意見も多々あった。
「日本では、自衛隊は軍隊ではないという解釈ですが、海外からみればそうじゃない。そんな自衛隊の置かれた複雑な状況を、ジブチの大統領以下、政府にご理解いただけたことも大きい」
田村氏は、視察の裏側などについてそう説明した。
そうして2011年7月、自衛隊初の海外拠点がジブチで開所され、現在も約400人の隊員が活動にあたっているという。
「日本から見ると、ジブチはアフリカの玄関口のような場所で、中東も目の前という地理的なことから、海賊以外のことにも必ず貢献できるはずだと思っていました。スーダンへの自衛隊機も、もし拠点がなければ、アフリカかアラブのどこかの国と交渉の場を持ち、自衛隊は軍隊でないが……というところから説明して、納得してもらって空港などを使わせてもらうことになります。今のスーダンの状況は一刻を争うもので、そんな時間的な余裕はないです」
現在、スーダンに滞在している日本人は、NGOや国際協力機構(JICA)、日本大使館の関係者やその家族ら約60人という。スーダンでの情勢を見て、現地に入るタイミングを判断するようだ。
ジブチからスーダンの首都ハルツームまでは直線距離で約1200キロあり、決して近い距離ではない。それでも田村氏はこう話す。
「日本からなら1万2千キロ。ジブチに輸送機が到着しているということだけでも、スーダンの日本人たちは心強く感じていると思います」
(AERA dot.編集部 今西憲之)