国会で麻生太郎首相(当時)が、
「世界中で起きている(海賊による襲撃事件の)約4割がこのソマリア沖というのが現実。これは大変な事態でして、この地域を日本の船は年間約2千~2100隻ぐらい航行しております」
「日本企業の船への海賊の襲撃事件というのは既に3件発生しております。現状はいつ海賊の襲撃を受けてもおかしくない」
などと答弁し、早急な法整備を求めていた。
こうした麻生首相の意向を受け、連立政権を組む自民、公明両党は2009年1月に「与党・海賊対策等に関するプロジェクトチーム」を発足させた。共同座長に元防衛庁長官(当時)の中谷元氏が就き、田村氏がその事務局長を務めることになったのだ。
田村氏が当時の様子についてこう語る。
「1月に入ってすぐ防衛省から私のところに『海賊対策の法律がない。自衛隊法の範囲でなんとかしたい』といった相談がきたのが最初。自民党内でも検討して、麻生さんが、早く自衛隊の拠点を作らないと、大きな被害が出てからでは遅いと決断したんです。国会の論議が白熱するようになったのは1月で、ジブチへの視察がすぐ決まりました」
ジブチが自衛隊の海外拠点として選ばれた理由としては、
1 ソマリアの隣国で海に面し、大きな港がある
2 政情が安定し、親日的で自衛隊の海外拠点にも協力が得やすい
3 すでにアメリカやフランスがジブチに基地を構えていた
4 ジブチの周辺国の理解も得られた
5 アフリカの東に位置し、アデン湾をはさんでアラビア半島という、アフリカのほか中東諸国への拠点にもなる
ことなどを田村氏はあげている。
プロジェクトチームの初会合は1月9日。その後、すぐに2月のジブチへの視察が決まった。
「2月8日には日本を出発して13日までという非常にハードな日程でした」(田村氏)。
ジブチに初めて降り立ったときのことについて田村氏は、
「空港に着いて外に出たときの強烈な印象は今も残っています。外気温が50度近くあって、すさまじい熱風にさらされました。『えらいとこに来たな』と」
と語った。