お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の新連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。
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長女について書きたい。
彼女が生まれたのは今から16年前。その前年に慌てて婚姻届を出し、彼女がやってくる準備をし出したことが思い出される。どういうことか察してほしい。
初めて「可愛い」と思ったのは1歳半ぐらいからだ。
ところで、赤ん坊は別に我が子でなくてもカワイイ、でも、それは「子犬がカワイイ」とあまり変わらぬ感覚。泣いて、喚いて、うんこばかりする。一人では何も出来ない彼らを、何故か我々は放ったらかさない。
カワイイからである。私は少なくとも1年半は半信半疑だった。私がこの子を放っておかないのはDNAに従順なだけだからと思い、やれ夜中にミルクだ、お尻がかぶれないようにこまめにオムツ替えだなんだとしてあげていた。ところが1年半後にそれが変わった。彼女が「パパ」とか言い出したからだ。そこからはもう、彼女の方が圧倒的に試合を有利に進めているような状態。人質を取られた気分ってこういうことかもしれない。
医療、教育、娯楽の提供、通信費の免除などなど、易々とそれらを手に入れた上、まだ文句を言う。定額の小遣い制をやめたいと言ってくるので、ふむふむと話を聞いていれば、「欲しい時に欲しいだけよこせ」という要求だったり。どれだけお前のために時間を費やせばいいのか。働き方改革が叫ばれる昨今だが、親と子にはそれは適用されないのか。それもこれもあの時「可愛い」と思ってしまったことに端を発している。