マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
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結婚は究極の“人生の無駄” 私は何故しているのか(※写真はイメージ)
結婚は究極の“人生の無駄” 私は何故しているのか(※写真はイメージ)

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の新連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

*  *  *

 未婚者に「結婚」を説明してみる。

「結婚とは戦争である」

 私はそのように説明する。「ビビらせてどうする」と言う向きもあるが、「安心させてどうする」である。

 韓国と北朝鮮のように、ひとまず休戦になっているだけなのだし、あるいはモザイク状に自治区が交錯している地域でもある。さらに言えば、「エルサレムは首都である!」とか言わないことでなんとか収めている“未決着案件”だったりもする。

 将棋の盤面を俯瞰で見て、どちらが現在詰みに向かって有利になっているのか。「夫婦」という状態は投了まで続く。しかし進行形の局面は二人で作ったひとつの「作品」。私は今作品を作っているのだ。

 分かっただろうか。

 これで分からなければ、あなたは結婚に向いていない。もしくは物凄く向いているかのどちらかだろう。

 雰囲気を変える。

 結婚の難しさはあらゆる場面に出現しがちだ。例えば「インスタント麺問題」。

 実家の常備ラーメンは「チャルメラ」であった。ところが、妻の実家は「サッポロ一番」。結婚当初「え? チャルメラじゃないの?」とうっかり言ってしまった私。その反応にぼんやりとした“母の存在”を感じ取った妻は途端に態度を硬化させた。小さいギクシャクというものは本当に煩わしいもの。私はすかさず「サッポロ一番の方が美味いかもね!」と彼女に寄り添う政策に舵を切った。

 このように、フレキシブルに相手を懐柔することは結婚という外交には必要なこと。言わば私は、負けることで国益を守ったのだ。

 一歩後退したが、前進もある。

 例えば、家電の配線、テレビの録画などは全部妻にやってもらう。彼女は私が頑としてやらないので出来ないと思っている、だから仕方なくやる。しかし、私は本気を出せばできるのだ。でもやらない。結果、彼女は“問題意識”なくその作業を引き受けることになった。つまり私は一滴の血も流さずその権利を手に入れたのだ。

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