「ママ、やって~」
今日も彼女は私の猿芝居を鵜呑みにしている。笑いが止まらない。
再度言っておくが私は本気を出せば出来るのだ。でもやらない。この“縄張り”は私のものだからである。
結婚に夢を持てない若者が多いと聞く。人類は、史上かつてないほど結婚しなくてもいい状態になっている。結婚による不便の多さより、非婚で不便なことの方が少ないのだと判断しているのだろう。
結婚という制度は言わば「古典」。仕事である程度結果を残した人間が「そろそろ結婚でもするか」という時のことを想像してみてほしい。それはまるでクラシックカーのオーナーになるようなものじゃないだろうか。そのぐらいの贅沢品であり、嗜好品化している。私の場合は完全に低所得者の“勢い婚”だった。「二人でいれば強くなれた気がした」のだ。どうだ、頭が悪いだろう。
現在もこの状態をうまく説明できないでいる。ただ不思議な感触があるのだ。言わば結婚という究極の“人生の無駄”を振り返り、ふと「いったい何をやっているのだろう?」と思うのだが、今のところ私はこの作品作りをやめる気はない。
※AERA 2018年5月21日号