ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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写真:ぐっちーさん提供
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 さて、今年もパリにおります。今が一番良い季節で、ちょうど日本の連休中に出かけるとフライトも安くて大変都合がいいわけです。毎日ワイン畑巡りをして、もっぱらワインを買い付けるのですが、もちろん、仕事ですから誤解のないように願います(笑)。早いバカンスを取って……とか言う人がたくさんいるので困ります。仕事!!です。

 さて、もう30年以上パリに来ていて、アメリカと違い住んだこともなく、ある意味定点観測なんですよ、ここは。この30年間に如実な変化が二つあります。圧倒的に英語が通じるようになったこと。要するに英語ができないと、仕事にならない。こちらのソムリエ試験は昔はフランス語オンリーでしたが、今は英語もOK。そうやって外に出ていかないと金にならんわけです。

 元々ボルドーなんてイギリスの植民地だった時代が結構長いので、英語文化は浸透しているのですが、意地になっても英語は使いたくないというところが独特でして、そのとばっちりが我々に来ていたのです(笑)。

 そして、もう一つ見逃せないのは有色人種の増加です。30年前はフランスというとそれはもう白人の国というイメージでしたが、今はその影は微塵もありません。何が言いたいのかというと、それは国民戦線のルペン党首に代表されるような超右翼が出てくるだろということで、まさに昨今の問題に直面するわけです。

 パリの街中を歩いているととにかく、アラブ系・アフリカ系の人が目につきます。ただ、ほぼすべての移民がきちんとしたフランス語を喋るので、まだ社会として許容できているんだと思います。もちろん政府がかなりの予算を費やして移民のフランス語教育をしているわけですが、果たして日本はどうでしょうか。

 移民受け入れの話ばかりが先行し、結局、日本語が障害になって、実力はあるのに、介護福祉士資格を取れない……なんてインドネシアの人たちの話を聞くたびにやる気あんのかよと思います。

 ところで、フランスはアメリカと違ってチップがなきゃいけないという社会ではありませんが、サービスとはそれ相応のお金を払ってもらった対価という考え方はすごくはっきりしている。日本の嫌なところはサービス=タダ、みたいに思ってる奴が多すぎること。前にも書いたけど、ワインサーブしてもらっても、ありがとう!の一言も言えないアホが多すぎるわな。

 サービスがタダと思っている限り、サービスの質も上がらない。対価を貰うからこそプロフェッショナルなサービスが育つわけで、日本の「お・も・て・な・し」なんて嘘八百です。旅館を出るときにずらっと並んで挨拶するのがサービスではなく、客の好きな時間に朝飯を食べられるほうがよほど重要です。

AERA 2018年5月21日号