

どれだけの人が、華々しい幕開けを想像できただろうか。
6季ぶりに大リーグのシアトル・マリナーズに復帰したイチロー(44)と、10年ぶりに日本のプロ野球に戻り、巨人でプレーしている上原浩治(43)。ともに3月上旬まで所属先が決まらなかった「レジェンド」が、幸先のいいスタートを切った。
3月31日、マリナーズの本拠地、セーフコ・フィールド。「9番レフト」で先発したイチローは、走攻守すべてにおいて輝きを放った。
三回の守りで、あわや本塁打という打球を背走し、ジャンピングキャッチ。その裏の打席では、今季初安打が出た。「速い打球でなくても、ヒットは打てる。技術はそれ以外にもありますから」と言うイチローらしい二塁内野安打。続くマイアミ・マーリンズ時代の同僚でもあるゴードンの右前安打で、俊足を飛ばして三塁に進んだ。七回にも左前安打。大リーグ通算安打数を3082(3月31日時点)とし、歴代単独21位につけた。
自身を「ケージの中で一番大きく育ってしまった犬」に例え、ひたすらメジャー契約を待った。日本球界復帰の噂も流れる中、古巣との1年契約が発表されたのは、3月7日だった。
ただ、その後も苦難は続いた。14日のオープン戦中に右ふくらはぎの痛みを訴え、リハビリの最中に出場した練習試合では頭部に死球を受けて交代。開幕には、何とか間に合った印象だ。
マリナーズは、外野手の主力に故障者が続出したことで、イチローの獲得に動いたと言われる。けが人が戻ってくると、出場機会が減りかねず、厳しいシーズンには変わりない。
「21歳から22歳になるならいいけど、うれしくはない。体力が落ちていくから」。43歳の誕生日を迎えた4月3日。巨人の上原は、ナゴヤドームのマウンドに立った。2点リードの八回、今季初めてとなる敵地での登板。「以前と違う感じはあった」とマウンドへの順応も課題として口にしていたが、いとも簡単に三者凡退に抑えた。