「人生100年時代」といわれる昨今、定年退職後のキャリアを考える必要が出てきた。最近では50歳前後で働き方を見直す人も多い。その一つが副業を本業にすることだ。
会社で働きながら、自分が残りの人生を捧げたいと思う副業に出合い、見事その仕事を本業にできたら素晴らしい。
日本食研ホールディングスに勤めながら、得意のCG技術の腕を磨き、45歳で退職。年収1500万円の本業にしたのが愛媛県の石水修司さんだ。
「とにかく、自分の力量を知りたかった。自分が信じるCG映像の可能性を形にしたかった、というのが会社を辞めてCG制作一本で食べていく決心をした理由です。子どもたちに、夢を追う自分の背中を見せたかったという気持ちもあります」
そんな石水さんの夢をかなえるサービスを展開していたのが、オンライン上で仕事を依頼したい企業と仕事をしたい個人とをマッチングする「クラウドソーシング」を手がける企業、ランサーズ。同社は仕事の依頼主と「ランサー」と呼ばれる担い手をつなぐビジネスモデルで急成長中の企業だ。システム開発やウェブデザイン、原稿執筆や翻訳など、さまざまな仕事がある。地方在住で自分の実力を試したい石水さんのような人が、まずは副業として腕試しするのにはぴったりだった。
そんなランサーズの秋好陽介社長も、学生時代からIT関連のビジネスを起業し、収入を得てきた副業体験組である。
「クラウドソーシングは、自分の得意分野や趣味のスキルを生かして副業収入を得たい人にぜひ活用してほしいサービスです。仕事を依頼する側にとっても、これまで結婚式のカメラマンといえば10万円払わないと雇えなかったものが、セミプロのカメラマンなら2万~3万円の出費で頼めます。以前なら仕事にならないと思っていた得意分野や趣味が、副業や新たなビジネスとして成立するんです」
現在、ランサーズの会員は100万人以上いるが、その4割以上が副業だという。これまでの依頼件数は188万件を超えている。ネットに自分のスキルを登録することで、新しい仕事を獲得できるかもしれない。
世の中には多様なニーズがあり、ニーズに見合った報酬がある。仕事がうまくマッチングすれば、年齢は関係なく、収入倍増もありうる。定年後も続けられる仕事を見つけられるのも、クラウドソーシングで働く醍醐味だろう。(ライター・中島晶子、安住拓哉)
※AERA 2018年4月2日号