ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 今年の冬は岩手県紫波町、東京の自宅、広島の社宅と3カ所を住み分けていました。仕事の都合なのですが、最も暖房設備のパワーが強力な東京の自宅が一番寒かったという驚くべき体験をしました。

 紫波町の「オガール」は、我々がつくるときに、断熱によるエネルギー節約を目標の一つに掲げ、ノウハウを集めました。ちょうど今現在、最後の宅地販売をしております。その住宅は暖房をほとんど必要としないドイツの「パッシブハウス」並みの基準による断熱構造となっています。

 私の部屋(約50平米)は、真冬に帰ってきても20度近くあるので、15分ほどエアコンを入れればもう十分。その後は一晩中エアコンをつけることはありません。朝は冷え込むので1時間ほどエアコンを入れますが、それだけで一日中25、26度の室温が保たれます。

 それに比べると東京の私の部屋はほぼ同じ大きさですがエアコンは一日中フル回転、揚げ句の果てデロンギのヒーターまで稼働させないと寒い。岩手に帰りたくなる(笑)。

 原因はアルミサッシを多用していること、そして大手住宅メーカーが究極の省エネである断熱に対し非常に消極的なことにあります。確かに断熱にすると建設コストは上がります。しかし、エネルギーの節約を考えるなら決して無駄な投資ではありません。日本はアメリカで稼いでいる貿易黒字が年間6兆~7兆円あるのに、中東に対して5兆円近くの貿易赤字を垂れ流している。簡単に言えばアメリカで稼いで中東に貢いでいる貿易収支となっているわけです。ここを見直せばもっと貿易構造は改善するのです。

 住宅に関して言うと2020年までに新築住宅の半分を、省エネに加えて太陽光発電や燃料電池などを駆使し実質的なエネルギー消費をゼロに近づける「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」(ZEH)という規格にする目標(義務ですらない)を設定しているのですが、ドイツが今現在義務付けているパッシブハウス基準と比べると、例えば年間暖房負荷は、ドイツの1平米あたり15kWに比べ、日本は1平米あたり120-150kWとなっており、ほぼ10倍甘い基準。

 北欧はもちろん、アメリカ、中国でさえドイツ基準を取り入れ始めており、このままいけば日本が「エネルギーテロリスト国家」呼ばわりされることは間違いありません。

AERA 2018年3月26日号