金価格はドル相場と深い関係があり、ドル安になると金価格は上昇すると言われる。戦時中に、基軸通貨である米ドルが買われるうちは、まだ大きな混乱とは言えないが、米ドルが売られて金が買われると、戦況は混迷を深めつつあると言っていい。
近年、金価格が上昇した背景には米ドル=米国の国力の低下が反映されている。
実際に、日本が当事国になった場合はさらに複雑だ。日本国内の金価格は、ドル安円高で価格が下がるため予測は難しい。
米ドルは開戦までは買われて、開戦すると売られることが多い。つまり、円高になりやすいのだが、日本の場合、外貨建ての資産を、銀行や企業、個人が大量に保有。開戦によって対外資産を売却して日本円に戻す働きが出やすい。東日本大震災でも、瞬間的に1ドル=76円台まで円高が進んだ。有事の金買いだけでは、金価格が大きく下がって、役に立たない可能性もある。
仮に、日本が攻撃対象になったらどうすればいいのか。現金=預金資産が多い日本の場合、当然気になるのは銀行だ。銀行は預金者の財産を守ってくれるのか。
そもそも銀行の預金データは、関東と関西という具合に分散されているが、万が一にでも核が使われた場合は、バックアップもろとも消失する可能性が出てくる。生命保険や損害保険は戦争による死亡や損害は補償の対象外だ。
さらに、現代の戦争は実際の爆弾よりも、サイバー攻撃重視とも言われる。仮想通貨が日本で人気なのも北朝鮮情勢と無縁ではないかもしれない。
17年に日本銀行が発表したデータによると、「サイバー攻撃に特化した専門組織は未整備」と答えた金融機関は全体の46%、外部からの侵入に対する脆弱性検査すらしていない金融機関が47.2%に達する。経営規模の小さな機関ほどサイバー攻撃対策が遅れているとも指摘している。
自分の財産は自分で守る、を基本にするしか方法はないのかもしれない。(経済ジャーナリスト・岩崎博充)
※AERA 2018年3月19日号