廃炉に向けた作業が続く、東京電力福島第一原子力発電所。その現場に入り、廃炉の記録を撮り続けている写真家が写真集を出した。
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満開の桜の木の下を、首までの作業服にマスクと手袋をつけて歩く作業員たち。足元に、太陽が短い影を作る。奥には汚染水タンクが林立する。日付は2016年4月12日──。
写真家の西澤丞(じょう)さん(50)が出した写真集『福島第一 廃炉の記録』(みすず書房)に収められた一枚だ。
「僕が伝えたかったのは、廃炉が進む現場の雰囲気。写真を見た人が、あたかも現場に行ったかのような印象を持ってほしかった」
この頃には、すでに構内では簡易マスクで作業できる現場も増え、防護服も頭まで覆うつなぎではなく、首までのものになっていたという。
西澤さんは、「立ち入り禁止」の向こう側に興味を抱き、人々の暮らしを支える「日本の現場」を撮る写真家として知られる。子どものころから工事現場に興味を持ち、そこでは何がつくられているのか、壁の向こうを見たかった。撮影プロダクション勤務などを経て、2000年にフリーになると、カメラを担いで全国の製鉄所やロケット製造の現場などを飛び回った。
そんな写真家が、なぜ廃炉を撮ることになったのか。
「僕は写真が得意。自分にできることは何だろうと考えた時、それは、写真を撮って外の人に伝えるということでした」
あの日、11年3月11日。巨大地震に伴う津波で全交流電源を失った東京電力福島第一原子力発電所は水素爆発を起こし、大量の放射能をまき散らした。
これから一体どうなるのか。不安が襲い、その後の成り行きを見守ったが、時間が経っても原発内の鮮明な写真は発表されない。いま現場では何が起きているのか。廃炉までの記録を次世代に残しておかないといけない──。誰も撮らないのであれば、俺が撮るしかない。
だが原発はフリーの写真家が容易に立ち入れる場所ではない。取材を通して面識のあった東電の広報担当者に会い、後に東電の社内分社組織「福島第一廃炉推進カンパニー」の代表となる増田尚宏(なおひろ)氏も交えて話をした。