いま、ダイバーシティーの分野で急成長を続ける企業がある。障害者の就労支援や発達障害のある子どもの学習支援などを手掛けるリタリコだ。
障害者向け就労支援サービスでは、全国600社以上の企業をインターン先として紹介することで、障害者やその親がそれまで気づかなかった適性を発見するチャンスを増やした。発達障害などの「生きづらさ」を抱えた子どもの学習支援では、気持ちのコントロールや友人との付き合い方などのソーシャルスキルを、一人一人異なる方法で教えている。
2005年に仙台市で創業。本社を東京都目黒区に移し、16年に東証マザーズに上場した。17年には東証1部に市場変更を果たす。社員約1600人を擁し、障害者支援分野では国内最大手。成長を牽引(けんいん)してきたのが社長の長谷川敦弥(あつみ)さん(32)だ。
障害者支援や子育て支援、教育をはじめ、福祉、医療、環境、地域活性化などの分野で、社会が抱える課題をビジネスの力で解決することを目指す長谷川さんのような社会起業家が、次々に登場している。
リタリコのような株式会社のみならず、NPO法人、個人事業主、組合など形はさまざま。彼らが手がける事業は「ソーシャルビジネス」、生み出す変化は「ソーシャルイノベーション」などと呼ばれ、世界的にも注目が集まる。
「世界経済フォーラム2017」でヤング・グローバル・リーダーズに選出されたのが、リタリコの長谷川さんだった。
リタリコの急成長や、本社のオフィスや子どもたちのための学習教室、保護者が情報をシェアするウェブサイトを彩るポップなビタミンカラーは、「儲(もう)からない」「なんだか地味」というソーシャルビジネスのイメージを裏切るものだ。
長谷川さんは、名古屋大学理学部を卒業後の08年に新卒でリタリコに入社した。当時はほぼ無名で東京の社員は十数人。営業職などを経て、翌09年には社長に就任した。いまリタリコが掲げるビジョン「障害のない社会をつくる」は、長谷川さんの体験から生まれたものだ。