岐阜県多治見市の出身。幼稚園の頃から集団生活が苦手で、「先生の言うことを聞かない」と言われる子どもだった。中高生時代も学校のルールや教師の教えを疑問に思うことが多く、それらを変えようと発言したり行動したりして「気持ち悪い」と言われたり、眼底骨折するほどの暴力を振るわれたり。
「嫌われ者な自分が嫌いでした。社会に出てもどうせうまくいかないだろうと思って鬱々(うつうつ)としていましたね」(長谷川さん)
転機は大学1年のとき。アルバイトとして働いた焼き肉店でのオーナー夫妻との出会いだ。
「いい声してる」
「お客さんに好かれる」
「行動力がある」
否定され続けた長谷川さんのすべてが肯定された。長谷川さんも期待に応えようと、団体客獲得のためにオフィスビルで飛び込み営業をしたり、アルバイト勧誘のためのチラシをつくり駅前で配ったり。積極的に店の経営に関わった。さらには、
「敦弥くんには世界を良くする力があるかもしれない」
「東京かニューヨークに行ってみなさい」
という夫妻の言葉に背中を押されて大学を休学。上京して3年間、IT企業で働いた。そして思った。ITはすごい。これをゲームや戦争ではなく困っている人のために使いたい。そうすれば若くても、社会をいい方向に変えられる。
東京で出会った政治家や起業家と自分との共通点の多さにも驚いた。常識に縛られるのが苦手なこと。周りからちょっと浮いていた学生時代──。
社会起業家を育成するNPO法人ETIC.代表理事の宮城治男さん、若者に議員事務所でのインターンシップを斡旋(あっせん)するNPO法人ドットジェイピー理事長の佐藤大吾さん、東日本大震災の復興事業を手掛ける一般社団法人RCFの藤沢烈さんら、現代を代表する社会起業家たちからは、社会を変えていこうという思いの強さをダイレクトに感じた。
「学校では、創造性を発揮すればするほど規則を破る迷惑行為として非難されたけど、社会を変えていくのはそういう人なんだな、と。人と違うのはいいことで、そういう個性を大事にできる社会の仕組みや教育をつくりたいと思うようになりました」(長谷川さん)