「私たちは『買われた』展」に来て初めて自分が悪いわけじゃなかったんだと気づき、被害を話してくれたことで、保護につながった子がいます。
私も高校生の頃は家族とうまくいかず、家に帰れなくて町をさまよう生活でした。ビルの屋上で段ボールを敷いて寝たこともあります。そんな私に興味を持って話しかけてくるのは、体目当ての人だけ。今もその構造は変わっていません。
買う側が悪い、搾取しようとする側が悪いんだと言い続けないと、被害者が問題意識を持つことすらできませんよね。
梁:今後重視したいのは「国際標準」です。例えば、政治家レイシズムデータベースは国際条約である人種差別撤廃条約に基づいて作っていますし、サッカーも国際NGOのプログラムに参加して監視しています。日本国内の差別はアメリカやヨーロッパの基準で見たら大問題だと言ってもらって、それを逆輸入する。
法規制がなく、「言論の自由が認められているんだから差別発言してもいい」「被害者だけではなく加害者の言い分も併記しないと」などと言われている日本では、この方法しかないと思うんです。
仁藤:JKビジネスの問題も、最初に取り上げたのは外国人記者クラブでした。アメリカや国連が問題視してくれたことが、規制する条例につながったのかも。内容は不十分ですけど。
梁:政治家の差別発言の英訳も始めています。今年開催される国連の人種差別撤廃委員会にもリポートを送るつもりです。20年のオリンピックを見越して、日本のレイシズムを可視化する必要があると思っています。
仁藤:発信することは大切ですよね。私もミスリードだと思った報道や、慰安婦・安保法制・集団的自衛権など問題だと思ったことは何でもSNSに書くようにしています。もちろん自民党の批判もする。でもそうすると、他のNGOの人からは「法律は変えられないよ」とか「損するよ」とか言われちゃう。そんなこと、全くないんですけどね。
これからもColaboは、街で苦しんでる女の子と出会って一緒に生きていくという草の根の活動にこだわって、現場から発信していく。そこはぶれたくないと思ってます。
梁:今がお互い正念場ですね。
(構成/編集部・竹下郁子)
※AERA 2018年2月5日号