買春という行為にいたるまでの搾取や社会的な構造を無視して、都合よく、「自己責任論」や「労働とお金の問題」として解釈している。他人事の子が多くて、分断を感じます。

梁:挑発的で確信犯的な人にどうアプローチするかは課題ですね。ARICがこだわっているのは、差別をする側、つまり加害者を可視化して封じ込めていくことです。アメリカやEUには差別を禁止する法律があるので、加害者と不毛な議論をする必要なんてない。日本では、ダメなものはダメと言い続けるしかないでしょう。

仁藤:児童買春の問題では加害者を糾弾することはまだまだできていなくて、課題だと思っています。この間、韓国で同じような活動をしている団体を見に行ったら、女の子たちを売春に誘う人たちのツイートを集めて警察に提出していたんです。

梁:それ、いいですね。

仁藤:日本では「サイバー補導」という名前で、警察官が身分を隠してネット上で子どもたちとやりとりし、犯罪に巻き込まれそうになったら現場に行って補導することで被害を防ぐ、ということがあるんですが、子どもたちには注意するだけでケアにつながらないし、補導歴が残って停学になることもある。

 内閣府や東京都は、女の子の写真を使った「#はしゃぎ過ぎダメ」「ほんっとに、ヤバイよ。そのバイト。」なんていうポスターを作って、被害者の側に「自分で身を守れ」と啓発しているけど、まずは加害者に「やめろ」と言わないと。

●国際基準を武器に闘う

梁:加害者こそが悪なんだという規範を社会に浸透させることが重要ですね。僕は、被害者が声を上げないと成立しない反差別運動にずっと違和感を抱いてきました。もう、被害者は差別されすぎて傷つきすぎて、反論できる状況にない。悪いのは差別する側であって自分ではないんだと言うための「盾」というか、言葉がないんですよ。

仁藤:買春された経験がある女の子も同じです。「ついて行ったのは私だし」とか「5千円受け取っちゃったし」とか、自分に落ち度があったと思い込まされている。そうさせるのは、社会や大人のこれまでの対応です。

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