それで分かりました。いまの少女たちが置かれている状況も慰安婦のそれも人種差別も、全部つながっているんだなって。
梁:僕は在日3世なんですが、ヘイトや殺害予告を送りつけられることはしょっちゅうです。確かに買春もヘイトスピーチも差別主義的な発想によるもので、根本は同じかもしれませんね。実際、外国人排斥運動をやっている人がJKビジネスを擁護していたり、レイシストとセクシストが重なっていたりすることは多いです。
仁藤:そして、差別に立ち向かおうとすると「あなたが差別してる」という話にすり替えられちゃう。私は「男性差別主義者」とか「男性憎悪がひどい」とかよく言われます。
梁:いまの日本の差別は、昔とは全く次元が違うと感じています。2000年以前は、無知からくる「うっかり差別発言」が問題でした。でもいまは、相手にダメージを与えるための意図的な差別が急増しています。標的は、外国人や女性などのマイノリティーだけじゃない。人権を主張したり民主主義を守ろうとしたり、社会を変えようとする人もたたかれる。
仁藤:児童買春を経験した少女たちの実情を伝える「私たちは『買われた』展」をやったときは、1日で300件の誹謗(ひぼう)中傷がきて、レイプ予告もありました。講演もよくするんですが、会場でトイレまでついてきて持論をぶちまけられたこともある。ウィキペディアにデマの書き込みをされるのもつらいです。身を守るだけですごく大変。そういう論調に影響を受ける学生が多いのも、気になっています。
●日本が嫌なら帰れば
梁:以前、出張授業に出かけた高校や大学で、男子学生に「在日特権あるんでしょ?」と、挑発的な口調で言われたことがありましたね。「日本が嫌なら朝鮮に帰ればいいじゃないですか」とコメントされたり。
仁藤:高校で買春をテーマに講演しても、女子生徒が鼻で笑うように「それはウィンウィンの関係だ」なんて言う。「売春せざるを得ない子がいることで普通の女子高生が性暴力被害から守られてる」「貧困な女子高生たちの自由を尊重したい」「奴隷でいる権利もある」とかね。