斎藤:僕と信田さんが本を書いたときは、団塊世代の母とアラフォーの娘の問題としてフォーカスされたわけですが、その娘たちが今やアラフィフに。彼女たちが反応するのはわかりますが、20代、30代も共感しているのは、世代が変わっても母娘問題が反復されている、ということなんでしょうか?
信田:そうですね。10年前に「口火を切った」のだと思います。さらに団塊世代の母親が祖母となり、カウンセリングには、孫の問題や、娘や嫁の育児について相談に来る人が増えています。良くも悪くも子どもの家族に積極的に介入し「大活躍」してる。新刊『母・娘・祖母が共存するために』は、存在感を増す団塊世代の「祖母」についても言及しています。
斎藤:団塊世代の女性を語るにあたり、団塊男性についても分析していますが、引きこもり家庭の父親像とまったく同じで驚きました。
信田:全共闘時代に誇りと挫折を抱え、仕事人間で男尊女卑……というステレオタイプ。例外もいますが。
斎藤:韓国もそうなんだけど、父親疎外の構図がある。典型的なのが単身赴任。日本は仕事で父親が離れますが、韓国は母子が海外留学し、父親は国に残って一生懸命仕送りする。こんな奇妙な状況が許されているのは、世界でも日本と韓国ぐらいです。
●「女がサバイブする知恵」巧妙な教育虐待
信田:韓国からの留学生の女性が私の本を読み、「自分の国とまったく同じ。10年後には韓国でも深刻な母娘問題が噴出するだろう」と。
斎藤:単身赴任までいかなくても、常に不在の父親は家庭内コミュニケーションから疎外され、居場所がない。一見被害者のようですが、仕事にかこつけて家族に関わろうとしなかった自身のせいでもある。母親はそんな父親に失望し、期待はすべて子どもに託し始める。それが濃密な母子密着を生む。僕は常々「母娘問題や引きこもりのラスボスは父親だ」と言っています。母親が犯人のように語られますが、原因をつくっているのは実は父親なんです。